おすすめ探偵小説

一年ぶりになる創元からのクイーン新訳です。1933年発表作。
二万人が詰め掛けた巨大競技場で、観客が注視しているまさにその人物が射殺される。非常に派手な道具立てであります。
やったのは誰か、そして凶器はどこへ消えたのか。

前作「エジプト十字架の謎」では展開にスピード感があったのに対して、こちらは舞台のスケールを大きくしたせいか、なかなか捜査がはかどらない。また、終盤に入るまでエラリーが自分での考えを一切明らかにしないため、推理の興趣がいまひとつ盛り上がってこないのだ。ずっと捜査だけが続いているようで、作品の半ばくらいまでは単調に感じられるのが正直なところ。現場でかき集められた45挺の銃の検査のくだりなどは、もう少し省略を効かせてくれよと思う。
さらにいうと、特徴のあるキャラクターを複数出しているけれど、物語の中で有機的に機能していないのではないかな。

フーダニットとしてはさすがの切れであります。それまで一度も疑いをかけられなかった部分が表面化する際の衝撃といったら。手掛かりはあからさまな形で転がされているのだから、トリッキーな真相に対してリアリティを云々するのはそもそもフィクションとしてのレベルが違う話だ。
また、ある人物に対する調査が実は別の意図によるものだった、という誤導もシンプルではあるけれど気が利いています。
そして何気に異様なのは、作中である重大な役割を演じている人物に名前すら与えられていない、ということだろう。探偵小説、恐るべし。

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